Tuesday, December 22, 2015

御礼: 友澤 [2015]


著者の友澤さんから頂戴しました.ありがとうございます.

友澤さんにはサステイナビリティ研究所でお世話になっています.

最近あるところで話した際,「拒絶する主体」という言葉を否定的な響きをもって使った身としては,「拒絶することの創造性」という魅力的な捉え方に興味をそそられました.


  • 友澤悠季 [2015] 「「公害反対運動」の再検討――拒絶することの創造性に着目して」『同時代史研究』8: 18-34.
    • I 本稿の課題
    • II 「公害」と「公害反対運動」をめぐる史的前提
      • 1 高度成長は「公害」を前提とした
      • 2 「公害反対運動」への社会的な期待
      • 3 「公害反対運動」をめぐる資料状況と課題
    • III 運動の動機とそのゆくえ――地域で生きること
      • 1 「百年公害」を断ち切る挑戦――「渡良瀬川鉱毒根絶太田期成同盟会」の運動
        • (1)初期の運動と世論の盛衰
        • (2)毛利田での被害と運動の再燃
        • (3)カドミウムの検出と調停申請
        • (4)「鉱毒根絶はこれから始まる」
        • (5)伝える相手の変化
      • 2 不安と信頼をめぐる葛藤――原発立地町での原発反対運動
        • (1)「公害対策」から外された放射性物質と原発反対運動
        • (2)福島県沿岸での「公害」と「原子力」
        • (3)「原子力の危険性」を理解してもらう困難
        • (4)不安と信頼との葛藤
      • 3 「美しい郷土」の原風景――広田湾埋め立て開発反対運動が守ろうとしたもの
        • (1)岩手県陸前高田市に訪れた「地域開発」の契機と異議申し立て
        • (2)市民の多様な反応
        • (3)続けられた地域開発の議論
        • (4)「何十年、何百年」という時間への出発
    • IV 拒絶することの創造性――「される側」の論理から
      • 1 「される側」からの出発
      • 2 拒絶することが生み出す創造性

Monday, September 21, 2015

御礼: 山崎 (編) [2015]



編者である山崎望先生より,ご恵送たまわりました.ありがとうございます.

本書は,ヘイトスピーチデモを前にした編者の「何か大きく異なるものが眼前に現れている、という衝撃」をもとに,「従来のナショナリズムにはない何かが「ある」、もしくは「欠けている」」,新たな形態としての「奇妙なナショナリズム」を,政治学者・社会学者が多角的に分析した論文集となっています(「おわりに」より).

山崎先生は序論,8章および「おわりに」を執筆されています.また,研究会などでたびたびお世話になっている清原悠さんが2章を執筆されています.


  • 目次
    • 序論 奇妙なナショナリズム?(山崎望) [1]
    • 第1章 ネット右翼とは何か(伊藤昌亮) [29]
    • 第2章 歴史修正主義の台頭と排外主義の連接――読売新聞における「歴史認識」言説の検討(清原悠) [69]
    • 第3章 社会運動の変容と新たな「戦略」――カウンター運動の可能性(富永京子) [113]
    • 第4章 欧州における右翼ポピュリスト政党の台頭(古賀光生) [139]
    • 第5章 制度化されたナショナリズム――オーストリア多文化主義の新自由主義的転回(塩原良和) [165]
    • 第6章 ナショナリズム批判と立場性――「マジョリティとして」と「日本人として」の狭間で(明戸隆浩) [197]
    • 第7章 日本の保守主義――その思想と系譜(五野井郁夫) [233]
    • 第8章 「奇妙なナショナリズム」と民主主義――「政治的なもの」の変容(山崎望) [277]
    • おわりに(山崎望) [305]


序論では,既存のナショナリズムの類型が整理された上で,本書の分析対象となる現代ナショナリズムの「奇妙さ」が複数提示されています.とりわけ,「少数派ではなく、マジョリティこそがむしろ様々な層における「被害者」(もしくは潜在的な被害者)」としての自己定義をするようになっているという指摘(12頁)には,大変興味をそそられるところです.

また8章では,奇妙なナショナリズムへの対応にあたっての困難を乗り越える可能性が「民主主義の複線化」という視角から示されており,強く共感するとともに,同じくデモクラシー理論を研究する者として取り組むべき課題を再認識させて頂くことができました.

まだ全部を読めているわけではないのですが,理論と現実,思想と運動,過去と現在,日本と海外,さまざまな面からナショナリズムの変容が検証されているという意味で,繰り返し参照されるべき重要な一冊かと思います.じっくりと味読させて頂きます.

Friday, May 29, 2015

政治と理論研究会 第14回


下記の要領で研究会を開催します※終了しました.

どなたでも自由にご参加頂けます.事前申し込みは不要です.



  • 報告者:宮川 裕二(法政大学 博士後期課程)
  • 報告題名:「統治性研究」アプローチによる「新しい公共(空間)」政策言説の研究

  • 報告概要:

  •  「新しい公共(空間)」政策言説は、1990 年代後半以降、日本の新たな国家・社会の改革・形成指針として採用され、各分野・各レベルに大きな影響を及ぼしてきた。多様性を含み込みながら類同的な概念として語られてきたそれは、さまざまな立場・見地から、賛否あるいは両義的評価がなされてきたが、いずれにせよ国家・政府の限界や権能の縮退を示しているという認識においては、ほぼ一致をみせている。しかし報告者は、それを「国家の空洞化」の現れと捉えるのではなく、新たな統治のあり方へのシフトと関わるものとの仮説を立て、その研究方法として「統治性研究」アプローチをとることとした。

     本論の「統治性研究」とは、ミシェル・フーコーの1977-78、78-79年度コレージュ・ド・フランス講義を嚆矢とし、その後アングロ-サクソン諸国の社会学や政治学を中心に展開されてきたものを指す。そこでは統治(government)することとは「他者の行動の可能な領野を構造化すること」(フーコー)であるとされ、そのアプローチは現在を、「間接的テクニックによって個人を指導し統制する新自由主義的な統治形態」を軸とした「国家の統治能力の喪失というよりは、統治のテクノロジーの再編成と再構築」(トーマス・レムケ)に向かっているものと診断するものである。イギリスの政治社会学者ニコラス・ローズは、そのアプローチに基づいて、ブレア政権の「第三の道」の統治性・統治テクノロジーを「アドヴァンスト・リベラル」と特徴づけている。

     本論は、まず「統治性研究」の先行研究を渉猟し、そのアプローチの視座に基づいて、「新しい公共(空間)」政策言説をめぐるポジションについて、①ロールバック新自由主義、②ロールアウト新自由主義、③左派、④参加型市民主義の4つの理念型を提示し、それぞれの代表的な論者の文献を分析して、それらがどのような論点を基軸としてそれに向き合っているのかを整理した。さらに、「新しい公共(空間)」政策言説の推進側に立っていたのは主に①②であり、対立局面はあっても相互補完的な両者間で主調が入れ替わりながら推進されてきたことが、その言説に揺らぎをもたらした主因であるとみなし、1997年から現在に至る、すなわち行政改革会議「最終報告」の「公共性の空間」から、民主党政権下の「新しい公共」と第二次安倍政権の「共助社会づくり」までの政府関係文書の分析を行った。そしてそのような検討を通じて以下のような結論を得た。

     すなわち、「新しい公共(空間)」とは、アドヴァンスト・リベラル段階の自由主義統治性のもと、従前のケインズ主義的統治性下の政府と諸アクターとの関係設定を再編し、統治者としての政府が、被治者である諸アクターにより展開される様々な活動及びその効果を管理しようと意欲する、統治実践の領域であるとする。多様なアクターが、多様な戦略や政策ツールを用いながら、それぞれの利害関心―それは利己的とされることも利他的とされることもありうるし、また制度構築あるいはキャンペーンにより働きかけられたものであることもありうる―の実現を図ろうと自律的に行為し合う空間である(政府もこのレベルでは一アクターとなることがある)とともに、その活動と効果が人口の全体・国家に危険を及ぼすことを避け、その維持・増強に資するものとなるよう、政府により、主には間接的介入によって舵取りされるガバナンス空間、ということである。そして、そのような領域を形成するために、諸アクターの自由を生産し消費するような仕組みを整えるよう促したり、諸アクターが各種領域で活動できるような制度改革に向けて方向づけを行なったり、さらにこれが新たな日本社会・国家全体の指針であると国民の意識を涵養し活動へと促す機能を果たしたりするものが、「新しい公共(空間)」政策言説である、と。


  • 問い合わせ先:松尾 隆佑 kihamu[at]gmail.com

Tuesday, May 12, 2015

掲載告知: 「ステークホールディング論の史的展開と批判的再構成」


学会誌投稿論文が刊行されました.下記に目次を掲載しますので,書店で見かけた際にはお手に取って見て頂ければ幸いです.


  • 松尾隆佑 [2015] 「ステークホールディング論の史的展開と批判的再構成――普遍主義的な資産ベース福祉によるシティズンシップ保障の構想」『政治思想研究』15: 366-395.
    • 一 はじめに――社会的包摂・シティズンシップ保障・普遍主義福祉
    • 二 史的展開
      • 1 ステークホルダー資本主義
      • 2 ステークホルダー・グラント
      • 3 財産所有デモクラシー
    • 三 批判的再構成
      • 1 ステークホールディング論の過去と未来
      • 2 理念的側面――民主的連帯・集合的義務・自律保護
        • (1)連帯の理由――互恵性から民主的連帯へ
        • (2)果たされるべき義務――その集合的性質
        • (3)自律の保護――多元的な政治社会におけるステークホルダーの地位
      • 3 制度的側面――普遍主義的な資産ベース福祉を中心とする複合的保障
    • 四 おわりに――再び、「居場所」と「出番」のある社会へ

    国家と圏域の政治思想 (政治思想研究)

収録号は学会HPで目次が確認できるほか,数年後には全体ファイルが公開されます.また,将来的にはJ-Stageで論文単位のファイルも公開されるものと思います.学会誌という性格もあり,抜き刷りは非会員でお世話になった方を中心にお配りする予定です.

論文の内容は,2013年8月に東京法哲学研究会で行った報告「ステークホールディングの理論的再構成――福祉ガバナンスの規律を中心に」を修正したものです.研究会にご出席頂いた方々には,この場を借りて深謝申し上げます.

さらに遡ると,元々は2008年に提出した修士論文でわずかに言及したステークホルダー資本主義やステークホルダー・グラントの議論を深掘りしつつ拡張したという成り立ちがあります.査読を通るまでに時間がかかったことも含め,現時点での情勢に照らしてどうかと考えるところがなくはありません.

また,限られた字数でさまざまな論点に触れており,われながら無茶な論文だなぁとも感じますが,ひとまず世に出すことができて良かったと今は思っています.

ご笑覧・ご批判を乞う次第です.

Wednesday, February 25, 2015

御礼: 源島 [2015]


著者の源島さんからご恵送頂きました.ありがとうございます.

ブレア政権下での社会的包摂の理念がなぜワークフェア政策へと帰結したのかを,戦後イギリスの「就労規範」に着目して解き明かそうとするもので,アイデアの政治のアプローチによる最新の研究成果かと思います.

源島さんとは同時期に法政へ入学した間柄ですので(修士課程か博士課程かの違いはありましたが),筑波に進学されてからも着実に研究を進められていることに感慨深く拝読しました.


  • 源島穣 [2015] 「イギリス福祉国家改革における社会的包摂の論理」『国際公共政策論集』35: 51-67.
    • はじめに
    • 第一章 社会的排除/包摂に関する議論
    • 第二章 労働党の社会的包摂政策
    • 第三章 ベヴァリッジ報告が提出した就労規範
      • (1)ベヴァリッジによる福祉国家――福祉「国家」と「個人」
      • (2)福祉国家の危機の時期――福祉「国家」と「個人」の関係の継続
    • 第四章 イギリスにおける社会的排除の言説状況
      • (1)排除に対する「当事者」の視点
      • (2)福祉「国家」から福祉「社会」へ
    • 第五章 完全雇用を取り戻す――「福祉社会」と「個人」
    • 結論と含意


Friday, January 30, 2015

御礼: 河合 [2014]


著者の河合さんからご恵送頂きました.ありがとうございます.

アーレントの「始まり」論(ないし「活動」論)のポテンシャルを丁寧に見定めるご論文で,立憲主義やラディカル・デモクラシーへの関心からも興味深く読むことができると思います.

  • 河合恭平 [2014] 「H・アーレントのアメリカ革命論と黒人差別の認識――「始まり」の恣意性と暴力に関連させて」『社会思想史研究』38: 184-203.
    • はじめに
    • 一 アーレントの「始まり」論とその難問――主にアメリカ革命論との関係で
      • 1 「始まり」およびその恣意性と暴力について
      • 2 「始まり」の難問の解決策としてのアメリカ革命という「始まり」
    • 二 『革命について』におけるアーレントの黒人差別の認識
    • 三 「リトルロックに関する考察」におけるアーレントの黒人差別の認識
    • 四 「市民的不服従」論文における「始まり」論の展開――黒人差別との関連で
    • 結論
    〔社会思想史学会年報〕社会思想史研究no.38 2014 〈特集〉社会思想としての科学

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