Friday, December 30, 2016

2016年の政治思想


2016年に刊行された主な政治思想書を,コメントを付さずに羅列します.時系列ではなく,大まかに研究書(単著,論文集),一般書・教科書,翻訳の順に並べています.一昨年以前のものはこちらをご覧ください(2015年はありません).手元にあるメモを頼りにしていますので,抜けが多いと思いますが,ご了承ください.


西洋政治思想













  • フリードリッヒ二世『反マキアヴェッリ論』大津真作 (監訳), 京都大学学術出版会(近代社会思想コレクション 17).
  • 反マキアヴェッリ論 (近代社会思想コレクション)




東洋政治思想








  • 朴忠錫『韓国政治思想史』飯田泰三 (監修), 井上厚史/石田徹 (訳), 法政大学出版局.
  • 韓国政治思想史


国際政治思想



政治哲学・政治理論




  • 後藤玲子 (編) 『正義』ミネルヴァ書房(福祉+α).
  • 正義 (福祉+α)






  • オノラ・オニール『正義の境界』神島裕子 (訳), みすず書房.
  • 正義の境界




※2017年1月2日,追記.

Friday, December 16, 2016

掲載告知: 「影響を受ける者が決定せよ――ステークホルダー・デモクラシーの規範的正当化」


学会誌投稿論文が公刊されます.書店などに並ぶのはもう少し先かと思いますが,ご関心の向きはご笑覧頂けると幸いです.出版社HPのページはこちらです.


  • 松尾隆佑 [2016] 「影響を受ける者が決定せよ――ステークホルダー・デモクラシーの規範的正当化」『年報政治学』2016(2): 356-375.
    • はじめに
    • 1. 被影響利害原理とその解釈
    • 2. グローバル・ステークホルダー・デモクラシー
    • 3. 批判と擁護
      • 3.1. 適正な包摂は為されるか
      • 3.2. 政治的平等は確保されるか
      • 3.3. 望ましい帰結は導かれるか
    • おわりに

【要旨】 集合的自己決定としてのデモクラシーには、決定の主体たるべきデモスの境界画定という根本的な決定を民主的に行うことの困難が伴う。本稿では、こうした「境界問題」を解決する指針として、決定の影響を被る者によってデモスを構成するべきとする「被影響利害原理」が有力であることを論じ、この原理に基づく「グローバル・ステークホルダー・デモクラシー(GSD)」の構想を検討することで、新たな民主的秩序化の可能性を示す。被影響利害原理の解釈は、1)影響の意味、2)影響の不確定性、3)影響を被る者への発言力の配分、などをめぐって多様でありうるが、GSDは、諸個人の自律を脅かすような影響を蓋然的にもたらす国家的・非国家的な公共権力を、等しい発言力を認められたステークホルダー間の熟議により統御すべきとする立場である。被影響利害原理に基づく場合にもデモスの境界をめぐる争いは避けられず、GSDが主権国家秩序に取って代わりうるわけでもないが、その制度化は従来の法的デモスに加えて、機能的・多元的なデモスを通じた集合的自己決定の回路を新たに整備するものであり、より適正な境界画定を導く構想として規範的に擁護しうる。

ステークホルダー・デモクラシーという立場についての原理的な議論で,以前の記事で触れたように,10月の日本政治学会で報告した内容と姉妹編のような関連性になっています(執筆時期はこちらの論文が先です).あわせてお読み頂けると嬉しいです.

思えば卒論の時から同様の研究テーマに取り組んでいるわけで,そのことを話したある先生に「ずいぶん一貫しているね(珍しい)」といった反応を頂いたことがありますが,一貫している割にこの程度の水準かと思われるかもしれません.ご批判を乞う次第です.


*なお論文の内容とは関係ありませんが,このブログや他に私が運営するサイトについて,更新が滞っていることを心苦しく思っております.来年度中を目途にウェブ上の活動体制を再構築したいと考えておりますので,引き続きよろしくお願いいたします.

Monday, October 3, 2016

日本政治学会2016年度研究大会


10月2日(日)に,日本政治学会2016年度研究大会(於:立命館大学大阪いばらきキャンパス)の分科会C-1「民主主義の衝突?――危機から競合へ」にて,研究報告をさせて頂きました.

論題は,「分割して統治させよ――ステークホルダー・デモクラシーの複数性」というもので,ステークホルダー・デモクラシーという立場について,熟議モデルに引きつける解釈と集計モデルに引きつける解釈,それらの複合可能性などを検討した内容でした.

拙い報告となり,また頂いた質問等にも十分に答えることができませんでしたが,分科会をご一緒させて頂いた各先生方と,ご質問頂いた先生方,ご清聴頂きましたフロアの方々,開催校スタッフの方々に,心より御礼申し上げます.

報告原稿はこちらに公開しておりますので,ご関心の向きはご笑覧頂ければ幸いです.後日改めて告知いたしますが,註に挙げている近刊論文と姉妹編のような格好になりますので,あわせて今後ご意見など頂くことができれば嬉しく思います.

Tuesday, May 31, 2016

政治思想学会2016年度研究大会


去る5月29日(日)に,政治思想学会2016年度研究大会(於:名古屋大学東山キャンパス)の自由論題分科会Cにて,研究報告をさせて頂きました.

論題は,「企業経営における政治的なもの――経済権力の民主化へ向けた予備的考察」というもので,19世紀後半から20世紀前半までの主要な経営学説・経営思想を「小政治」の一形式にかかわる思想史として読み替えることで,企業経営を主題とする政治思想史・政治理論研究の可能性を探る試みでした.

報告の際に一部お聞き苦しいところがあり,また頂いたご質問に不十分なお答えしかできないところが多く申し訳ありませんでしたが,ご司会頂いた辻康夫先生,ご質問頂いた諸先生方,ご清聴頂きましたフロアの方々に改めて御礼申し上げます.

学会HPに事前にアップして頂いたものに修正を加えた最終的な報告原稿を,academia.eduに掲載しておきましたので,ご関心がおありの方には是非ご笑覧頂ければ幸いです.


Wednesday, May 25, 2016

御礼: 山本 [2016]



著者の山本さんよりご恵贈賜りました.ありがとうございます.

山本さんとは主に学会などでお会いすることが多いのですが,今秋の日本政治学会では分科会をご一緒させて頂くことになり,何かとお世話になっております.

博士論文の待望の書籍化ということで,個別には既発表の雑誌論文などで拝読している部分もあるかと思いますが,まとまったかたちで読めるようになったことで理解を深められそうです.勉強いたします.

タイトルの「不審者」については,帯に引かれている次の記述が印象的です.それは「私たちのすぐかたわらに佇む不気味な隣人」,「たとえば私たちがよく目にするような、デモを横目に立ち行く彼/彼女であり、リズムに合わせてつま先を揺らす警官であり、遠慮がちに端のほうでコールを口ずさむ私たちのことでもある」.


  • 目次
    • 序章 デモクラシー、われら同質なるもの [1]
      • 1 「人民」の両義性とデモクラシー [1]
      • 2 終わりなき同質化と異質なもの [5]
      • 3 本書の主題と先行研究 [9]
      • 4 本書の構成 [18]
    • 第一部 エルネスト・ラクラウのポスト・マルクス主義
      • 第一章 ポスト・マルクス主義の系譜学――ラディカル・デモクラシーの足音 [27]
        • 1 ポスト・マルクス主義前夜 [27]
        • 2 マルクス主義国家論との対話 [29]
        • 3 ラクラウのイデオロギー論――階級還元主義批判と人民=民主主義的審問 [33]
        • 4 ポピュリズム論への展開 [38]
        • 5 ポスト・マルクス主義の系譜学 [42]
        • 6 「釈明なきポスト・マルクス主義」のために [46]
      • 第二章 ポスト・マルクス主義の方法論 [51]
        • 1 マルクス主義における本質主義批判とヘゲモニー [52]
        • 2 言説 [60]
        • 3 ポスト・マルクス主義への不満と不安 [69]
        • 4 ポスト基礎付け主義 [74]
        • 5 ラディカルな唯物論 [79]
      • 第三章 政治と普遍的なるものの行方 [85]
        • 1 普遍主義の黄昏のなかで [85]
        • 2 『ヘゲモニー』における普遍主義への懐疑 [89]
        • 3 普遍性の構築 [93]
        • 4 普遍化しきれないものの残余 [101]
        • 5 普遍と個別のはざまで [106]
      • 第四章 敵対性と異質なもの [111]
        • 1 敵対性への問い [111]
        • 2 危機の時代におけるヘゲモニーと敵対性 [114]
        • 3 転位と構成的外部 [118]
        • 4 敵対性の相対化 [126]
        • 5 同質性と異質性の閾 [130]
      • 補論 政治的オプティミストの弁明――ポスト・マルクス主義とプラグマティズム [141]
        • 1 はじめに [141]
        • 2 ポスト・マルクス主義とプラグマティズム [144]
        • 3 基礎付けへの二つの態度 [149]
        • 4 プラグマティズムを徹底化すること [154]
        • 5 政治的作為へのオプティミズム [158]
    • 第二部 不審者のデモクラシーに向けて
      • 第五章 アゴニズムの隘路――シャンタル・ムフの闘技的民主主義について [165]
        • 1 ラディカル・デモクラシーとは何か [166]
        • 2 シャンタル・ムフの闘技的民主主義 [171]
        • 3 政治的なものの沈黙とアゴニズムの隘路 [180]
      • 第六章 不審者のモンタージュ [187]
        • 1 異質な不審者の出現 [187]
        • 2 参加デモクラシー再訪 [190]
        • 3 不審者の存在論 [194]
        • 4 不審者のモンタージュ [204]
      • 第七章 不審者のデモクラシー――ポピュリズム/同一化/象徴的代表/動員 [211]
        • 1 同一性の政治学を牽制する――現代政治理論の二潮流 [212]
        • 2 ポピュリズムとデモクラシーの二縒り理論 [220]
        • 3 ラクラウのポピュリズム論――政治的なものの回帰 [230]
        • 4 同一化と象徴的代表 [238]
        • 5 参加モデルから動員モデルへ [246]
      • 終章 政治的作為と偶発性――戦略と政治的なもの [261]
        • 1 ラディカルなものの責務 [261]
        • 2 政治的作為と偶発性のアポリア [265]
        • 3 付帯と偶発 [270]
        • 4 付帯の政治と偶発性の政治 [272]
        • 5 民主主義理論から民主主義戦略へ [276]
        • 6 戦略と政治的なもの [282]


Saturday, April 9, 2016

掲載・公開告知: 「辟易するエゴイスト――政治理論における利己主義の射程」


法政大学政治学専攻の院生が発行する学術誌『政治をめぐって』に掲載された拙稿がウェブで公開されました.刊行時期は2015年3月です.

断続的に取り組んでいるマックス・シュティルナーの再解釈ですが,今回は政治理論に引きつけてシュティルナーを読むための予備的考察といった内容になっています.その過程で色々な倫理学者を攻撃していますので,その辺りが読みどころでしょうか.

博士論文が終わったら,シュティルナーを対象とする思想史研究に本格的に取り組んでいきたいと考えています.いつになるか分かりませんが,思想史研究の成果を踏まえて,改めてエゴイズムの政治理論をまとめ直すことを長期的な目標としています.


  • 松尾隆佑 [2015] 「辟易するエゴイスト――政治理論における利己主義の射程」『政治をめぐって』34: 1-35.
    • はじめに
    • 1. 輪郭――エゴイズムとは何か
      • (1)エゴイズムの複数性
      • (2)心理的利己主義の擁護
      • (3)心理的快楽主義の擁護
    • 2. 条件――エゴイズムは可能か
      • (1)利己する主体の単位
      • (2)利己の時間的制約
      • (3)利己の身体的制約
    • 3. 構想――エゴイズムは値するか
      • (1)エゴイストによる正義構想
      • (2)主体像の刷新――リベラリズムと規範的関係論のあいだ
      • (3)エゴイズムの政治理論へ
    • おわりに


Thursday, April 7, 2016

御礼: 源島 [2016]


著者の源島さんからご恵送頂きました.ありがとうございます.

前作に引き続きアイデアの政治によるブレア政権期の研究で,思惑の異なるアクター間での「協働」を可能にした条件を,言説分析を通じて明らかにするものになっています.

今回は特に「解釈主義」の立場が明確に打ち出されており,方法的意識がより鮮明になっているように(専門外ながら)感じました.ご研究の更なる展開が期待されます.

  • 源島穣 [2016] 「イギリスの社会的包摂をめぐるアイディア――パートナーシップ制度参加に向けて」『国際公共政策論集』37: 67-84.
    • はじめに
    • 第1章 ガバナンスの展開とパートナーシップ制度
      • 1、ガバナンスの展開―「効率性」から「協働」へ―
      • 2、パートナーシップ制度とその問題点
    • 第2章 分析枠組
      • 1、どのようなアイディアを析出するか
      • 2、アイディア析出の方法
    • 第3章 協働に対する政府、地方政府、ボランタリー・セクターの認識
      • 1、政府
      • 2、地方政府、ボランタリー・セクター
    • 第4章 アイディアの生成
      • 1、「社会関係資本」の論理
      • 2、「文化の変革」の論理
      • 3、アイディアの確定
    • 結論と今後の課題

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